考えすぎる経営者ほど、判断が遅くなる!? 思考の「質」を上げる脳の使い方

「人は一日に何万回も思考している」という話があります。

では、そのうち本当に経営判断に役立っている思考は何割くらいでしょうか?

脳科学の研究によると、私たちが「考えている」と感じている時間の大半は“生産的”とは言いがたいものだとされています。

同じ問題の反復、起きるかどうかわからない未来への心配、過去の出来事の再解釈で占められています(さらに、そのほとんどは実際には起こらない)。

「考えた時間」と「判断の質」は、比例しない。

この結論をどう生かすかも、経営者の腕の見せ所です。


「考えすぎ」は能力の問題ではない

経営者が反すう思考に陥りやすいのは、その責任からでしょう。間違えた時のコストが高い。だから何度も確認したくなる。

それ自体は合理的な反応です。ただ、脳には厄介な性質もあります。

何もしていない時でも、脳は自動的に思考をしています。

この状態は「デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)」と呼ばれ、放っておくと不安や後悔、未解決の問題に向かいやすいことが知られています。

会議と会議の隙間、移動中、就寝前。そういった「手が空いている時間」に、最も重い問題が頭の中で動き出す経験は、多くの経営者に覚えがあるはずです。

問題は、その思考が「整理」ではなく「反復」になっていることです。同じ情報を同じ角度から何度も見ても、新しい答えは出てきません。脳が疲弊するだけで、判断の質はむしろ下がっていきます。

デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)とは

タスクのない時間(移動中・就寝前・会議の隙間)
   ↓
脳が自動的に「未解決の問題」へ向かう
   ↓
不安・後悔・反すうのループが始まる
   ↓
脳が疲弊し、判断の質が下がる

「考え方」を変えるより「状態」を変える

ここで、多くの人が陥りがちな誤解があります。

「考え方を変えよう」「ポジティブに捉え直そう」と、思考を頭の中だけで解決しようとすることです。

しかし脳の仕組みから言えば、思考の質は「考え方」よりも「脳の状態」によって決まります。疲れた脳、不安が高まった脳では、どれほど意志を持っても思考の質は上がりません。

有効なのは、状態そのものを変えることです。

疲弊した脳の状態整った脳の状態
思考のパターン同じことを繰り返す新しい視点が生まれる
判断の質下がる上がる
直感の精度鈍る鋭くなる
主な原因・条件睡眠不足・情報過多・孤立した思考適度な運動・思考の外部化・余白のある時間

意図的にリラックスの時間を取る

体を動かすとセロトニンやドーパミンが分泌され、脳の興奮状態が落ち着きます。10分歩くだけで、直前まで頭を占領していた問題が、なぜかすっきり整理されて見えることがある。あれは気のせいではなく、脳内の化学変化です。

スタンフォード大学の研究では、歩行が創造的思考を平均81%向上させることが確認されています。「散歩の時間があったら仕事をする」という発想は、実は生産性の観点からも逆効果です。

古来よりアイデアが湧きやすい場所として「馬上、枕上、厠上」の「三上」が有名ですが(馬の上、布団の中、お手洗い中)、良いアイデアがシャワー中や散歩中に浮かぶのも、同じ理由です。

体がリラックスしている時、思考は新しいつながりを作り始めます。力んで机に向かっている時ではなく、むしろ「考えていない時間」に気づきが訪れるのです。


思考を「頭の中」ではなく外に出す

もうひとつ、経営者の思考の質を下げる要因があります。頭の中だけで考えて視覚化しないことです。

人の脳は、処理すべき情報を多く抱えるほど、ひとつひとつの判断に使えるリソースが減ります。

資金繰り、組織の問題、幹部との関係、新事業の検討。これらがすべて未処理のまま頭の中に浮かんでいると、本当に集中すべき問題に向き合う前に、脳はすでに消耗しています。

解決策は、思考を外に出すことです。

考えを視覚化する3つの方法

ホワイトボードに書き出す。マインドマップで可視化する。あるいは、信頼できる相手に言葉として話す。どれでも構いません。頭の外に出た情報は、脳が「持ち続ける」ための負荷から解放されます。

話すことが特に有効なのは誰かと話すことです。声に出して言語化しようとするプロセス自体が、思考を整理します。

これまで様々なコーチングセッションを行ってきましたが、「話しているうちに頭の中のぐるぐるがスッキリした!」と話す経営者の方は非常に多いです。

方法具体的な行動効果
書いて視覚化するホワイトボード、メモ、マインドマップ脳が「保持する」負荷から解放される
図で構造化する関係図、フローチャート、優先度マトリクス問題の全体像が俯瞰できる
話して言語化するコーチ、信頼できる相手に話す口に出すプロセス自体が思考を整理する

「考える量」ではなく「考えどころ」を変える

経営者に必要なのは、「もっと考えること」ではありません。考えるべき問いに、最も良い状態で向き合えるかどうかです。

そのために必要なことは、実はシンプルです。

無駄な反すう思考に気づいたら、体を動かして状態を変える。頭の中にあるものを、言葉や図として外に出す。そして、本当に重要な判断のための脳のリソースを、意図的に残しておく。

思考の質を上げる3ステップ

タスクのない時間(移動中・就寝前・会議の隙間)
   ↓
脳が自動的に「未解決の問題」へ向かう
   ↓
不安・後悔・反すうのループが始まる
   ↓
脳が疲弊し、判断の質が下がる

「考える時間を増やす」のではなく、「考える状態を整える」。その違いが、経営判断の質に直結します。

判断に重さを感じている時、それは能力の限界ではなく、脳が正直に疲れているサインかもしれません。

一人で整理しきれないと感じた時は、ぜひ一度、私に話してみてください。

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この記事はCOACH-EX(コーチェックス)が制作しています。

COACH-EXは、経営者・エグゼクティブ層に特化したコーチングサービスです。

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    投稿者プロフィール

    濱島ゆき
    濱島ゆき
    カリフォルニア大学サンディエゴ校卒業後、モルガン・スタンレーやゴールドマン・サックスなど、外資系金融機関でキャリアを重ねる。シンガポール勤務を機にコーチングと出会い、国際コーチング連盟(ICF)認定コーチ資格を取得。現在は、国内外の経営者・リーダー層を中心にセッションを行っている。

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