「いつから学校に行くんだ」と聞いてしまう経営者へ。不登校の子どもに必要なのは、もう一つの正解ではない
会社でなら迷わず手を打てるのに、家ではどう声をかければいいのか分からない。
そんなもどかしさを抱えている経営者の方は、少なくないと思います。
仕事で磨いてきた問題解決の力が、なぜ子どもの前では空回りしてしまうのか。親としてできることは何なのか?
コーチとして経営者の方と向き合ってきた立場から、今回のケースを考えてみます。
会議は仕切れても、子どもの部屋の前では立ち止まってしまう
会社では、経営者として判断し、指示を出し、解決策を示すことが求められます。その力で信頼を得て、組織を動かし、成果を上げてきた方も多いと思います。
ところが、子どもが学校に行かなくなったとき、その力がうまく働かないことがあります。
原因を聞き出そうとする。期限を決めようとする。登校までの段取りを考える。
会社でなら正解だったはずの動きが、家ではかえって子どもを黙らせてしまうのです。
「いつから学校に行くんだ」。親にとっては、心配だから聞いているだけかもしれません。でも子どもには、「いつまでこの状態でいるつもりなの」と責められているように聞こえることがあります。
私は、ここに経営者の方がつまずきやすいポイントがあると思っています。
問題を見つければ解決する。それが仕事の基本になっているからこそ、答えが出ないまま待つことに、強いもどかしさを感じてしまうのです。

親の言葉より状態を見ている
子どもは、親の言うことをそのまま聞いて育つわけではありません。親が思っている以上に、親の状態を感じ取っています。
- 親に余裕があるように見えるか
- 家の中に安心感があるか
- 親が自分をどんな目で見ているか
「早く元に戻ってほしい」という焦りは、どれだけ言葉を選んでも伝わります。
だからこそ、子どもをどうにかしようとする前に、親自身の状態を一度見直してみる価値があります。
原因はすぐには分からない
学校に行けなくなる背景には、本人にも整理しきれないさまざまな事情が重なっていることがあります。それを子ども自身がうまく説明できないことも少なくありません。本人にも分かっていない場合すらあります。
経営の場なら、原因を特定してから対策を打つのが定石です。でも家庭では、原因探しを急ぐほど、子どもは問い詰められているように感じてしまいます。
まず必要なのは答えではなく、話してもいいと思える関係です。
なお、心身の不調が続いている、いじめなど安全に関わる事情がうかがえる場合は、学校や医療など専門の窓口に早めにつなぐことを優先してください。

祖母には話せて親には話せない理由
祖母には話せるのに、親には話せない。そんな子どもの話を聞くことがあります。祖母が特別な質問をしているわけではありません。
子どもにとって話しやすい相手とは、こういう人です。
- 否定せずに聞いてくれる
- 話しても責められない
- 最後まで聞いてもらえる
- 一緒にいて安心できる
頼れる人が、正しい答えをくれる人とは限りません。
親が正しい答えを出そうとするほど、子どもにとっては話しにくい相手になっていく。経営者の方ほど、受け入れがたい話かもしれません。

子どもを変える前に親ができること
人は、誰かに無理やり変えられるものではありません。けれど、安心できる場所があれば、自分のペースで少しずつ動き出すことはあります。
だから親が意識したいのは、子どもを無理に動かすことではなく、子どもが自分から動ける状態を整えることです。
まず話を聞く。気持ちを言葉にして返す。そして、落ち着いてから「どうしたい」と聞く。解決策を出す前に、この順番を守るだけでも、子どもとの会話は変わります。
実はこの順番は、コーチングで経営者の方と向き合うときの流れと、ほとんど同じです。
会社では部下の話をこうして聞けている方でも、自分の子どもの前になると、急に最初の二つを飛ばしてしまう。
親だからこそ焦る。それは自然なことだと思います。
学校に行けない時間を逆に活かす
学校に行けない時間が、結果として子どもにとって自分を立て直す時間になることもあります。
立ち止まって、自分の気持ちを整理するための時間です。
親の都合で早く状況を動かそうとするより、子どもが安心を取り戻し、少しずつ前を向けるような時間にする。
そのために親ができるのは、指示を出すことではなく、話を聞き、気持ちを受け止め、家を安心できる場所にしておくことです。

会社で解決してきた人ほど「待つ」が難しい
問題を見つけ、原因を突き止め、解決策を出す。その繰り返しで結果を出してきた方にとって、状況を動かさずに待つことは、何より落ち着かない選択だと思います。
でも、家庭で問われているのは、解決の速さではありません。子どもが自分から話し出せる関係と環境を、親がどれだけ整えておけるかです。
もし今、子どもに何を言っても空回りしている感覚があるなら、それはあなたの問題解決力が足りないからではないかもしれません。会社と同じやり方を、家でも使い続けてきただけなのかもしれません。
子どもに必要なのは、もう一つの正解ではなく、「ここでは急かされなくていい」と思える時間なのかもしれません。
投稿者プロフィール

- カリフォルニア大学サンディエゴ校卒業後、モルガン・スタンレーやゴールドマン・サックスなど、外資系金融機関でキャリアを重ねる。シンガポール勤務を機にコーチングと出会い、国際コーチング連盟(ICF)認定コーチ資格を取得。現在は、国内外の経営者・リーダー層を中心にセッションを行っている。





